TEMのピント合わせ はじめに

私は,TEMのほかにSEM(走査型電子顕微鏡)も経験があるのですが,SEMと比較すると,TEMのピント合わせは格段に難しいです.

SEMのピント合わせに必要なのは,ある程度コントラストが調整できている場合,Focusと非点のつまみだけですが,TEMではさらに光軸の調整が加わってきます.

さらにTEMではコントラストが乏しく,非点がでたときの像の流れがわかりづらいです.試料の中の適切な位置(アモルファスパターンなど)を見つけ,Focusをわざとずらしたり,ビームの大きさを変えながら,像の流れ,コントラストのバランスを見ながら非点を調整していきます.

最近のTEM修行で,ローレンツTEMをやっているうちにピント調整と非点除去のコツが見えてきましたので,何回かに分けて報告したいと思います.(最終的に高分解能TEMでのピント合わせまでいければいいですが,果たしてうまくいくでしょうか?)

なお,我々のTEMは,フィリプス社 TECNAI30 Lorentzです.他のTEMを全く知らないので,操作を説明する際,TECNAIで用いられる用語をそのまま用いるので,他の会社のTEMの参考にならないかもしれません.

また試料は鉄系の強磁性材料がメインになります.

(つづく)

子ども・ものづくりセミナー開催

8/2, 3に岩手大学で「子ども・ものづくりセミナー」が開催されます.

テーマは,岩手の特産品である南部鉄器の基本的な技術である「鋳造」です.

午前中,鋳造に関する講義や,大学内にあるミュージアムの見学,学内の散策を行い,
午後から子どもたちに実際に鋳造を体験してもらう鋳造実習が行われます.

鋳造実習では工学系技術室から2名が講師として参加します.

各日の詳細情報(PDFファイル)は下の日付をクリックすればご覧になれます.

詳細情報→8/2, 8/3

HPリニューアルして半月

技術室のHPがリニューアルされ半月ほどたちました.

おかげさまで学外・学内とも色々なところからアクセスが来ています.が,学外のアクセスの約半数くらいが,トップページを見ただけで帰っていってしまいます.これについては,偶然来ただけかもしれないので,しょうがないのかなという気がします.残りの半数は,主に大学関係者が多く,特定の分野のコンテンツを読まれているようです.

あと,早くも検索サイトからやってくる方もおります.キーワードはXRD, TEM関係です.検索サイトからのアクセスを期待する場合,まず記事を書かないと始まりません.とりあえず記事を書いて検索に引っかかれば,そのキーワードから,読者がどのような情報を必要としているかが分かりますので,記事を書くときの参考にできます.

今のところまだ記事が少ないので,検索キーワードの傾向はなんともいえません.私個人的には,いろいろな失敗談をどんどん載せていこうと思います.他にも実験で学生の陥りやすい罠とか,ちょっとした問題解決のヒントなど,技術職員の皆さんの豊富な知見のほんの少しでもいいので私まで一報ください.是非公開して,みんなの役に立てましょう.

あなたは一体、何モノなの?

皆さんは他人である個人を識別するとき、どのようにしていますか?
知り合いならば恐らく「顔」を見れば、その人が誰だか分かりますよね。
もしかしたら「声」を聞くだけでも分かるかも知れません。
実は物質にも「顔」があります。
『はぁ? どこに?』

まぁ残念ながら、肉眼で見るにはチョット厳しい大きさですが・・・。
でも「ある道具」を使うと見られるんです。それが「X線回折装置」です。
では早速、その「顔」を見てみましょう。

『ダマされた・・・・、ただのグラフか・・・・・(怒)。』
おっしゃるとおり、ただの「グラフ」ですが、実はこれが物質の「顔」なのです。
しかも、左側の方は彫りのはっきりしたなかなかのナイス・ガイ(?)です。
『それじゃぁ~、どこが目で、鼻で、口なのよ~』と思った方は、まぁ冷静に。
もう一つ、右側の別の「顔」も見てみて下さい。
こちらはまた特徴的な「顔立ち」です。もしかしたら「ハーフ」か「クウォーター」かも。

これら二つの「顔(=グラフ)」の山と谷を比べてみると、皆さんも気づいたでしょう?
そう、この二つの物質が全くの「別人」であることに。
『まぁ、別な人だとは分かったけど、それじゃぁ、一体誰なのさ?・・・・』
確かにそこまで知りたいというのが人情ですよね。

もともと知り合いの人同士ならば、顔を見れば誰だか分かるし、その人の名前も知っているのが普通です。では、全くの見ず知らずの人だったらどうでしょうか?
初めて会った人だったとしたら、何の手がかりもないですよね。
もちろん名前なんて分かるはずもありません。

<チョット、break time>

最近、テレビでは「刑事ドラマ」が盛んに放送されていますね。
それにしても「イケメン刑事」ばかり・・・・(苦笑)。
刑事さん達は毎日、凶悪犯との攻防を繰り広げています。
その刑事さん達にとっても、必死に追いかけている犯人は見ず知らずの人です。相手が日本人なのかどうかすら分かりません。だから参考となる情報が是非とも欲しいわけです。
「プロファイリング」って言葉を皆さんは耳にされたことはありますでしょうか?
警察には過去に発生した事件のデータが蓄積されています。今まさに追跡すべき犯人が関わっている事件の特徴をこのデータベースと照合することによって、「犯人像」を導き出すという手法です。行動範囲、職業、年齢層、性別などなど、「顔」を知られていない犯人の姿を何となく浮かび上がらせることが出来ます。これを絞り込んで行くとやがて犯人の名前が分かり、そして「顔写真」が入手できることもあるでしょう。

<Now, time up>

「X線回折装置」には10万件の物質データが蓄積されています。
しかも全部「顔写真」付き。
『いゃ~、これで助かった。百人力だな。』
では早速、先の二つの物質の「顔」をデータ照合してみましょう。

すると、一人目は「Si(シリコン)」さん。

そして、二人目は「Al2O3(酸化アルミニウム)」さんだと判明。
(両者とも、赤色の「顔データ」に緑色の「蓄積データ」がピッタリと一致しています。)

『いやいや全く、手こずらせやがって・・・・。ついに正体を曝いたぞ(満足)。』
めでたし、めでたし。

でも実はこんなに上手く正体を突き止められるのは、珍しいこと。
現実の物質には様々な不純物が知らず知らずのうちに混ざり込んでいることが多いのです。
従って、『右から見ると「Aさん」なんだけど、左ナナメ下から見ると「Bさん」なんだよなぁ~』というケースに泣かされることもしばしばあります。

岩手大学にはこういうことができる最新の装置がありますよ。
皆さんも、物質の「顔」を一度、見てみませんか?

(著:材料機能技術分野メンバー)

2つの引張試験機

私は前期に,2つの学生実験(材料工学)を担当しており,ともに引張試験機(以下試験機)を使用し,金属の試験片を引っ張っていますが,それぞれ別の試験機を使っています.

1つは,ロードセルタイプの試験機で電気的に荷重を測定する比較的新しいタイプ(左)のもの.もう一つは,油圧式のかなり古い試験機(右)で す.

使ってみると,当然新しい試験機が便利に決まっているのですが,新しいほうではどうもうまくいかないことがあるんです.引張試験片にひずみゲージというセンサーを張り付け,引っ張 りながらひずみを計測するという実験があるのですが,新しい試験機でこれをやろうとすると,ずみ計の値が安定せず測定不能に なるんです.おそらくノイズがのってるんだろうと思って,各部をアルミ箔で覆うなど対策をしてみましたがだめで,結局,油圧の古い試験機を使うことになっ たという経緯がありました.

ただ,古い試験機は油圧の加減で引張荷重を調整するのですが,その調整の仕方が超アナログチック!下の図のようにつまみを微調整して引張荷重を決めるのですが,なかなか荷重の値が安定せず,学生はかなり苦労します.つまみの先端を1mm動かしただけで荷重がかなり変化してしまいますから,指の先でそおぉっと触れる感じで調整しなければなりません.デジタル時代の学生にはいい経験になるのかなと思いますね.